【防災力:3】麻布台パークハウス
「東南海トラフ地震」「首都直下地震」等の大地震や、千年に一度といわれるような「スーパー台風」「線状降水帯豪雨」等の大水害に遭遇しても、家族の”命”と”財産”を守ることができる不動産なのか否かを簡易評価します。
災害に強い不動産は資産性も保たれます。
※建物が壊れたら資産性どころの話ではないので。
物件名 麻布台パークハウス
[所在地] 〒106-0041 東京都港区麻布台2丁目1−2
防災力 | Level 3 |
地盤 | [3]傾斜地、土砂災害特別警戒区域 |
浸水 | [3]約0.6mの浸水可能性 |
建物 | [3]地下室マンションのような形状 |
火災 | [5]接道状況及び系統連続性は良好 |
※5段階評価で5が最も安全(判断基準はこちら) |
標高・地形
●標高約7m~27m、台地の端にある高低差が約20mもの傾斜地に位置します。
●傾斜地の場合、表層面が高い方から低い方へと動こうとする自然の力が働きます。そのため、長い年月の間に地面がずれることがありえます。コンクリートでガチガチに固めているので問題ないと見る向きもありますが、平坦地と比較したら、地盤リスクがないとはいえません。
●対象地の南東側の法面(斜面)部分は「土砂災害特別警戒区域」及び「土砂災害警戒区域」に指定されていることから、崖崩れの危険性が高い場所といえます。
●敷地の一部が、12万年前~16万年前に作られたという「埋没谷(東京層下部基底面)」の範囲に該当しますので、大地震時の揺れが大きくなる可能性があります。
※ [国土地理院地図] → [土地の成り立ち・土地利用] → [土地条件図]
※ [土砂災害警戒区域等マップ(東京都)] → [土砂災害警戒区域]タブ
表層地盤増幅率
●表層地盤における地震時の揺れの大きさを示す地盤増幅率は”1.41~1.46”です。
●都区内では低い数値であり、地震時の揺れが小さく抑えられる可能性が高い場所です。
※地盤増幅率が”1.8”以上だと地盤が弱い(揺れやすい)とされます。推奨レベルは”1.6”以下です。
※ [J-SHIS Map(提供:防災科学技術研究所)] → [表層地盤]
【参照】高台立地が原則だが、高台でもダメな場所がある(J-SHIS Mapの見方)
周辺のボーリング調査
●敷地内に公開されたボーリング調査地点はありません。
●北西方で近接する調査地点では、
▼深度9m過ぎまで、N値0~3の柔らかい地層が続いています。
▼深度23m過ぎまでN値20ほどの地層がほとんどを占めます。
▼深度30m超でも支持層に到達しません。(柱状図の表記が30mまでです)
▼地下水位の下に砂質の地層がみられますので、液状化の可能性も考えられます。
●東方にある調査地点では、埋没谷の影響とみられる柔らかい地層が15m以深にみられます。
●深度9m過ぎまで柔らかい地層が続き、液状化の兆候がみられ、埋没谷の影響も否定できず、支持層の深さも30mを超えるようなので、地盤の良い場所とはいえません。
※地層は、数メートル離れただけで大きく変わることがあるので、購入の際には、当該地の地盤調査報告書を取り寄せましょう。
浸水リスク
●最大約0.6mの浸水可能性が指摘されています。
●内水氾濫の指摘としては深い数字です。標高を細かく見ると、当該箇所が窪地のようになっていることが分かります。
●そのため、想定を超える大雨が降った場合には、当該箇所に水が集まり、内水氾濫の被害が拡大する可能性があります。
※ [東京都建設局 浸水予想区域図] → [浸水リスク検索サービス]
※ [国土地理院地図] → [標高・土地の凹凸] → [自分で作る色別標高図]
建物
●2011年1月竣工のRC造地下1階地上16階建建物です。
●施工会社は、スーパーゼネコンの「竹中工務店」です。
●かつて「地下室マンション」と呼ばれていた形状に近いです。南から見ると17階層ありますが、東から見ると11階層です。
●1階レベルに大きな段差があるので、大きな地震の際に、複雑な揺れが建物に作用する可能性があります。
●平坦地にある建物と比較したら、損傷可能性は高いでしょう。
接面道路
●東側(幅員約9m~10.4m)、南西側(幅員約3.1m~4.1m)の2本の区道に接面する2方路地です。
●東側接面道路は片側一車線が整備された道路であり、外苑東通りとの接続は容易なので、系統連続性は良好です。
●接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。
地域危険度調査
東京都の「地震に関する地域危険度測定調査」によると、「麻布台2丁目」の地域危険度は“1”(※)であり、災害に強い地域であるとされています。
※地域危険度は、5段階評価で1が最も安全であることを示しています。
周辺環境他
「警視庁犯罪情報マップ」の「全刑法犯発生数2024年累計」を見ると、麻布台2丁目は10件となっており、治安は“5段階で1番安全なレベル”です。
本マンションの総評
●台地の端に位置する高低差20mもの傾斜地です。
●敷地の一部は、「土砂災害特別警戒区域」及び「土砂災害警戒区域」にかかっています。
●敷地の一部には埋没谷の影響がある可能性があるなど、ボーリング調査もあまり良い結果ではありません。
●敷地の一部に約0.6mの浸水可能性が指摘されています。
●1階レベルに大きな段差がある建物なので、大地震時に複雑な揺れが作用する可能性があります。
●接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。
⇒敷地の一部が「埋没谷の範囲」や「土砂災害特別警戒区域」に掛かり、周辺のボーリング調査もあまり良くない結果である上に、高低差20mもの傾斜地なので、地盤リスクは無視できません。敷地の一部が窪地にかかるので、浸水リスクも計上します。1階レベルに大きな段差がある建物なので、損傷可能性を認めます。これらを総合的に勘案し、防災力を“レベル3”とします。(5段階評価で5が最も安全)
その他
防災面とは無関係ですが、本物件は「定期借地権マンション」です。定期借地権マンションのマイナス面については、こちら↓をご参考にしてください。
■「定期借地権マンション」は嫌いですか?
https://property-analysis.org/fixed-term_land_lease_mansion/
≪注意事項≫
1. 本件評価は、不動産鑑定評価の手法に則ったものではありません。公開された情報のみを根拠とした「簡易評価」であり、実際に購入の判断をする際には、より詳細な調査が必要となります。
2. 本件評価の「リスク評価」は相対的なものです。防災上、“絶対に安全”といえる立地はありません。
3. 本件評価により損害や紛争が発生した場合でも、当社は責任を負いません。