【防災力:2】ライオンズタワー月島

「東南海トラフ地震」「首都直下地震」等の大地震や、千年に一度といわれるような「スーパー台風」「線状降水帯豪雨」等の大水害に遭遇しても、家族の”命”と”財産”を守ることができる不動産なのか否かを簡易評価します。
災害に強い不動産は資産性も保たれます。
※建物が壊れたら資産性どころの話ではないので。

物件名 ライオンズタワー月島

[所在地] 〒104-0051 東京都中央区佃2丁目10−9

防災力 Level 2
地盤 []液状化、支持層が深い
浸水 []高潮約0.5m
建物 []免震構造、タワー形状の高層建物
火災 []接道状況及び系統連続性は良好
※5段階評価で5が最も安全(判断基準はこちら)

 標高・地形

標高2m弱の湾岸の埋立地(明治時代に埋立)に位置します。
東京都建設局が公開している「東京の液状化予測図」では、敷地の過半が「液状化の可能性が高い地域」に含まれています。
最も新しい地層である「沖積層」の堆積エリアに含まれます。沖積層は、まだ固まり切っていない軟弱な地層であり、地震時に揺れやすい傾向があります。


※ [国土地理院地図] → [土地の成り立ち・土地利用] → [土地条件図]


※ 東京都建設局 → [東京の液状化予測図]

 表層地盤増幅率

表層地盤における地震時の揺れの大きさを示す地盤増幅率は”1.73~1.77”です。
標準より高い数値であり、地震時の揺れが大きくなる可能性が高い場所です。
※地盤増幅率が”1.8”以上だと地盤が弱い(揺れやすい)とされます。推奨レベルは”1.6”以下です。


※ [J-SHIS Map(提供:防災科学技術研究所)] → [表層地盤]

【参照】高台立地が原則だが、高台でもダメな場所がある(J-SHIS Mapの見方)

近隣のボーリング調査

敷地内に公開されたボーリング調査地点はありません。
北方で近接する調査地点では、深度12m~13mほどでN値50となるようです。
南方で近接する調査地点では、深度13mほどでN値50となるものの、支持層は21mより深いようです。(柱状図の表記がないため、支持層の深さは把握できません)
東方にある調査地点では、深度10m過ぎまでN値0の地層が続き、深度19m過ぎにN値50となるものの、深度30m近くでN値10を切る柔らかい地層などが混在し、深度40mを超えても支持層に到達しません。
全ての地点で、地下水位の下に砂質の地層が存在するので、液状化の可能性を否定できません。
北方の地点では、比較的良好といえる地盤ですが、東方の地点は良いとはいえません。
評価が分かれた場合は保守的に捉え、支持層が深く、液状化の懸念も残るので、地盤が良いとはいえません。
※地層は、数メートル離れただけで大きく変わることがあるので、購入の際には、当該地の地盤調査報告書を取り寄せましょう。

浸水リスク

高潮により最大約0.5mの浸水可能性が指摘されています。
河川の氾濫等による浸水可能性は指摘されていません。
対象地は、標高2m弱の湾岸の埋立地に位置します。
昨今「想定外」の災害が毎年のように起きていることを想起しますと、ハザードマップの想定を超える事態はあり得ます。

【高潮ハザードマップ】

※ [東京都港湾局] → [高潮リスク検索サービス]

【河川等が氾濫した場合の浸水想定区域】

※重ねるハザードマップ (出典:「ハザードマップポータルサイト」)

 建物

2005年12月竣工のRC造地下2階地上32階建です。
施工会社は、マンション建設を多く手掛ける「前田建設工業」です。
免震構造ですが、縦長のタワー型高層マンションです。
タワー形状の高層マンションは、防災面からは良い点がありません。万が一、施工不良があった場合には即大きな建物損壊リスクに繋がりますし、発災後にエレベーターが動かなくなると、高層階の住民は難儀するでしょう。防犯面等のメリットはありますが、本サイトは”防災”の観点からの評価になりますので、タワー形状の高層建物というだけでマイナス評価とします。
免震構造を採用しているので、損壊リスクは低いですが、災害リスクは残ると判断します。

【参照】タワーマンションを防災面では評価しない理由(より詳細に)
【参考】東日本大震災から学んだのは「“想定”が少ない方が安全」(免震構造についての私見が含まれます)

 接面道路

南西側(幅員約10.9m)、南東側(幅員約10.9m)、北西側(幅員約5.4m)の3本の区道に接面する3方路地です。
接道部分では、敷地後退をして歩道等を整備・拡張しています。
清澄通り等の周辺の都道との接続は容易なので、系統連続性も良好です。
接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。

地域危険度調査

東京都の「地震に関する地域危険度測定調査」によると、「佃2丁目」の地域危険度は“2”(※)であり、災害に比較的強い地域であるとされています。
※地域危険度は、5段階評価で1が最も安全であることを示しています。

周辺環境他

「警視庁犯罪情報マップ」の「全刑法犯発生数2024年累計」を見ると、佃2丁目は23件となっており、治安は“5段階で2番目に安全なレベル”です。
川と運河に囲まれた立地です。大地震や大水害で、運河にかかる橋が損傷するなど、橋の通行に支障が生じる事態となると、避難や救助が遅れる可能性があります。

 本マンションの総評

「液状化の可能性が高い地域」及び「沖積層の堆積エリア」に該当する、湾岸の埋立地に位置します。
表層地盤増幅率が標準より高い数値です。
ボーリング調査では、支持層が深く、液状化の懸念も残ることが把握できるので、地盤が良いとはいえません。
高潮で約0.5mの浸水可能性が指摘されています。
免震構造ですが、タワー形状の高層建物なので、災害リスクは残ると判断します。
接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。
どこに向かうにも橋を渡る必要がある立地です。大災害の際に、橋の通行に支障が生じると、災害リスクが高まります。

液状化及び沖積層エリアに該当し、表層地盤増幅率が高く、ボーリング調査も良いとはいえない結果なので、地盤リスクを無視できません。高潮で約0.5mの浸水可能性が指摘されています。免震構造ですが、タワー形状の高層建物なので、災害リスクは残ると判断します。更に橋の通行に支障が生じると災害リスクが増加する立地です。これらを総合的に勘案し、防災力を“レベル2”とします。 (5段階評価で5が最も安全)

≪注意事項≫
1. 本件評価は、不動産鑑定評価の手法に則ったものではありません。公開された情報のみを根拠とした「簡易評価」であり、実際に購入の判断をする際には、より詳細な調査が必要となります。
2. 本件評価の「リスク評価」は相対的なものです。防災上、“絶対に安全”といえる立地はありません。
3. 本件評価により損害や紛争が発生した場合でも、当社は責任を負いません。