「東南海トラフ地震」「首都直下地震」等の大地震や、千年に一度といわれるような「スーパー台風」「線状降水帯豪雨」等の大水害等に遭遇しても、家族の”命”と”財産”を守ることのできる不動産であるか否かを簡易評価します。
災害に強い不動産は資産性も保たれます。
※建物が壊れたら資産性どころの話ではないので。

物件名　エフローレ日本橋

[所在地] 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町１３−５

 標高・地形

●標高4m前後、東京東部の低地帯に位置します。
●東京都建設局が公開している「東京の液状化予測図」では、「液状化の可能性がある地域」に含まれています。
●対象地は、最も新しい地層である「沖積層」の堆積エリアに含まれます。沖積層は、まだ固まり切っていない軟弱な地層であり、地震時に揺れやすい傾向があります。
●敷地の一部は、12万年前～16万年前に作られたという「埋没谷(東京層下部基底面)」の範囲に該当しますので、大地震の際の揺れが大きくなる可能性があります。

※ [国土地理院地図] → [土地の成り立ち・土地利用] → [土地条件図]

※ 東京都建設局 → [東京の液状化予測図]

【参照】地下に「埋没谷」があると、何が悪いのか？

 表層地盤増幅率

●表層地盤における地震時の揺れの大きさを示す地盤増幅率は”1.64”です。
●都区内では標準的な数値であり、地震時の揺れが大きくなる可能性は低い場所です。
※地盤増幅率が”1.8”以上だと地盤が弱い(揺れやすい)とされます。推奨レベルは”1.6”以下です。

※ [J-SHIS Map(提供：防災科学技術研究所)] → [表層地盤]

【参照】高台立地が原則だが、高台でもダメな場所がある(J-SHIS Mapの見方)

近隣のボーリング調査

●敷地内に公開されたボーリング調査地点はありません。
●北東側で隣接する2つの調査地点では、
▼比較的浅いうちからN値10超の地層となります。
▼深度7m～20mほどの地層は、N値10以内の少し柔らかい地層が続く柱状図と、概ねN値50の固い地層が続く柱状図の両極端なものとなっています。
▼支持層の深さは22m～39mほどとバラツキがあります。
▼地下水位の下に砂質の地層が存在するので、液状化の可能性は否定できません。
●その他の近隣にある調査地点では、比較的浅いうちに固い地層になる地点が多く、地盤の固さに大きな問題はないのではないかと推察します。
●地震時に揺れが大きくなるような非常に柔らかい地層はみられませんが、液状化の可能性があるので、地盤の良い場所とはいえません。
※地層は、数メートル離れただけで大きく変わることがあるので、購入の際には、当該地の地盤調査報告書を取り寄せましょう。

浸水リスク

●荒川・隅田川等の氾濫により0.5m～3m未満の浸水可能性が指摘されています。
●対象地は、隅田川の河岸との標高差も2mほどしかありません。
●昨今「想定外」の災害が毎年のように起きていることを想起しますと、ハザードマップの想定を超える事態はあり得ます。

【荒川・隅田川等が氾濫した場合の浸水想定区域】

※重ねるハザードマップ (出典：「ハザードマップポータルサイト」)

 建物

●2002年9月竣工のSRC造地下1階地上13階建です。
●施工会社は、マンション建設に実績のある「佐藤工業」です。佐藤工業は、2002年3月に会社更生法を申請、2009年9月に更生手続きが終結しています。
●本件マンションの施工期間が、佐藤工業の経営危機の時期と重なっています。建物は完成しているので大きな問題はないと思いますが、多少気にかかるポイントです。
●竣工した建物形状はシンプルなので、外形的には損壊リスクは低いであろうと判断します。

【参照】耐震等級“１”のマンションは震度７に耐えられない？

 接面道路

●北西側(幅員約11m)、南東側(幅員約8m)の2本の区道と接面する2方路地です。
●接面道路は一方通行路ですが、江戸通り(国道6号線)との接続は容易なので、系統連続性は良好です。
●接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。

地域危険度調査

東京都の「地震に関する地域危険度測定調査」によると、「日本橋大伝馬町」の地域危険度は“１”(※)であり、災害に強い地域であるとされています。
※地域危険度は、５段階評価で１が最も安全であることを示しています。

周辺環境他

「警視庁犯罪情報マップ」の「全刑法犯発生数2023年累計」を見ると、日本橋大伝馬町は22件となっており、治安は“5段階で2番目に安全なレベル”です。

 本マンションの総評

●「液状化」「沖積層」「埋没谷」エリアに該当する、東京東部の低地帯に位置します。
●表層地盤増幅率は標準的な数値です。
●ボーリング調査では、地震時に揺れが大きくなるような非常に柔らかい地層はみられませんが、液状化の可能性があることが把握できます。
●洪水で0.5m～3m等の浸水可能性等が指摘されています。
●シンプルな形状なので、建物自体の損壊リスクは低いと判断します。
●接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。

⇒「液状化」「沖積層」「埋没谷」エリアに該当する低地に位置し、ボーリング調査でも液状化の懸念は残ることが把握されるので、地盤リスクを無視できません。洪水リスクも認められるので、浸水リスクも計上します。これらを総合的に勘案し、防災力を“レベル３”とします。 (５段階評価で５が最も安全)

≪注意事項≫
1. 本件評価は、不動産鑑定評価の手法に則ったものではありません。公開された情報のみを根拠とした「簡易評価」であり、実際に購入の判断をする際には、より詳細な調査が必要となります。
2. 本件評価の「リスク評価」は相対的なものです。防災上、“絶対に安全”といえる立地はありません。
3. 本件評価により損害や紛争が発生した場合でも、当社は責任を負いません。