【防災力:3】元麻布ヒルズ
「東南海トラフ地震」「首都直下地震」等の大地震や、千年に一度といわれるような「スーパー台風」「線状降水帯豪雨」等の大水害に遭遇しても、家族の”命”と”財産”を守ることができる不動産なのか否かを簡易評価します。
災害に強い不動産は資産性も保たれます。
※建物が壊れたら資産性どころの話ではないので。
物件名 元麻布ヒルズ
1.大地震が発生しても安全か
| 対地震 | Level 3/5 (リスク有) |
| 地盤ハザード | [2/5]「埋没谷」「土砂災害特別警戒区域」に該当 |
| 地盤増幅率 | [3/5]標準的 |
| ボーリング | [2/5]良くない |
| 建物 | [3/5]免震構造、タワー形状の高層建物 |
| 【対地震の評価】 [地盤] ●隣地と標高差のある「崖上マンション」です。隣地境界は「土砂災害特別警戒区域」等に指定されるなど、傾斜地リスクが顕在です。ボーリング調査も、あまり良い結果ではないので、相応の地盤リスクがあると考えます。 〔建物〕 ●免震構造ですが、タワー形状の高層建物なので、災害リスクは残ると判断します。 〔対地震総評〕 ●相応の地盤リスクがあると考えられる立地である上に、タワー形状の高層建物なので、免震構造であっても被災リスクから切り離すことはできません。 |
【所在】〒106-0046 東京都港区元麻布1丁目3−1
標高・地形
| 標高 | 約25m~32m |
| 地形 | 台地の端にある傾斜地 |
●傾斜地の場合、表層面が高い方から低い方へと動こうとする自然の力が働きます。そのため、長い年月の間に地面がずれることがありえます。コンクリートでガチガチに固めているので問題ないと見る向きもありますが、平坦地と比較したら、地盤リスクがないとはいえません。
●また、隣地との境界に高低差があるため擁壁を設置しており、擁壁も築年が古くなると補修が必要となります。修繕費用(保守管理費用)が必要というコスト面の問題だけでなく、メンテナンスしないと地盤リスクが高くなる土地ということもできます。

※ [国土地理院地図] → [土地の成り立ち・土地利用] → [土地条件図]
地盤ハザード(災害危険)エリア
| 液状化 | 該当なし |
| 沖積層 | 該当なし |
| 埋没谷 | 範囲に該当 |
| 急傾斜等 | 該当する |
●12万年前~16万年前に作られたという「埋没谷(東京層下部基底面)」の範囲に該当しますので、大地震時の揺れが大きくなる可能性があります。
●東側隣地である善福寺の敷地とは10m超の高低差があり、この法面(斜面)部分は「土砂災害特別警戒区域」及び「土砂災害警戒区域」に指定されていることから、崖崩れの危険性が高い場所といえます。

※ [土砂災害警戒区域等マップ(東京都)] → [土砂災害警戒区域]タブ
表層地盤増幅率
| 表層地盤増幅率 | 1.55 |
●標準的な数値であり、地震時の揺れが大きくなる可能性は低い場所です。
※地盤増幅率が”1.8”以上だと地盤が弱い(揺れやすい)とされます。推奨レベルは”1.6”以下です。

※ [J-SHIS Map(提供:防災科学技術研究所)] → [表層地盤]
【参照】高台立地が原則だが、高台でもダメな場所がある(J-SHIS Mapの見方)
周辺のボーリング調査
●敷地内及び近隣に公開されたボーリング調査地点はありません。
●北西方にある調査地点では、深度8m過ぎに支持層となります。
●南西方にある調査地点では、
▼深度20m過ぎまでN値5以下の地層が続きます。
▼支持層の深さは22m過ぎであるようです。
●評価が分かれましたが、保守的に捉え、南西方の地点を重視します。
●地中20m過ぎまで柔らかい地層が続くので地盤が良いとはいえません。
※地層は、数メートル離れただけで大きく変わることがあるので、購入の際には、当該地の地盤調査報告書を取り寄せましょう。
建物
| 築年 | 2002年5月竣工 |
| 構造 | SRC造地下3階地上29階建 |
| 施工会社 | 竹中工務店 |
| その他 | 免震構造 |
●免震構造ですが、縦長のタワー型高層マンションです。
●タワー形状の高層マンションは、防災面からは良い点がありません。万が一、施工不良があった場合には即大きな建物損壊リスクに繋がりますし、発災後にエレベーターが動かなくなると、高層階の住民は難儀するでしょう。防犯面等のメリットはありますが、本サイトは”防災”の観点からの評価になりますので、タワー形状の高層建物というだけでマイナス評価とします。
●免震構造を採用しているので、損壊リスクは低いですが、災害リスクは残ると判断します。
●テラス棟は、中層RC造建物なので、損壊・災害リスクは低いです。
【参照】タワーマンションを防災面では評価しない理由(より詳細に)
【参考】東日本大震災から学んだのは「“想定”が少ない方が安全」(免震構造についての私見が含まれます)
2.1000年に一度の大水害が発生しても安全か
| 対水害 | Level 4/5 (大きな浸水リスクなし) |
| 標高 | 約25m~32m |
| 地形 | 台地の端にある傾斜地 |
| 浸水深 | [内水氾濫等]約0.3m |
| 【対水害の評価】 [標高・地形] ●標高約25m~32m、台地の端にある傾斜地に位置します。 〔浸水深〕 ●最大約0.3mの浸水可能性が指摘されています。 〔対水害総評〕 ●標高や地形からみて、敷地全体に大きな浸水リスクはないものと考えます。 ●想定を超える大雨が降った場合には、内水氾濫が拡大する可能性があります。 |

※ [東京都建設局 浸水予想区域図] → [浸水リスク検索サービス]
3.その他の災害リスク
| その他 | Level 4/5 (大きな災害リスクなし) |
| 接道状況 | 良好(角地) |
| 系統連続性 | 普通 |
| 地域危険度 | 災害に強い地域 |
| その他 | - |
接面道路
●北西側(幅員約9m~10.2m)、南側(幅員約6m)の2本の区道に接面する角地です。
●接道部分では、敷地後退をして歩道等を整備しています。
●北西側接面道路は一方通行路なので、系統連続性は普通とします。
●接道状況及び系統連続性に問題はなく、火災時の災害リスクは低いと判断します。
地域危険度調査
●東京都の「地震に関する地域危険度測定調査」によると、「元麻布1丁目」の地域危険度は“1”(※)であり、災害に強い地域であるとされています。

※地域危険度は、5段階評価で1が最も安全であることを示しています。
周辺環境他
●「警視庁犯罪情報マップ」の「全刑法犯発生数2024年累計」を見ると、元麻布1丁目は3件となっており、治安は“5段階で1番安全なレベル”です。
4.本マンションの総合評価
| 総合 | Level 3/5 |
| [対地震] | Level 3/5 (リスク有) |
| [対水害] | Level 4/5 (大きな浸水リスクなし) |
| [その他] | Level 4/5 (大きな災害リスクなし) |
【地震リスク】
相応の地盤リスクがあると考えられる立地である上に、タワー形状の高層建物なので、免震構造であっても被災リスクから切り離すことはできません。
【水害リスク】
標高や地形からみて、敷地全体に大きな浸水リスクはないものと考えます。
【その他リスク】
大きなリスクを感じるような要素なし
⇒地盤及び建物それぞれにリスクが認められるので、防災力を“レベル3”とします。
(5段階評価で5が最も安全)
≪注意事項≫
1. 本件評価は、不動産鑑定評価の手法に則ったものではありません。公開された情報のみを根拠とした「簡易評価」であり、実際に購入の判断をする際には、より詳細な調査が必要となります。
2. 本件評価の「リスク評価」は相対的なものです。防災上、“絶対に安全”といえる立地はありません。
3. 本件評価により損害や紛争が発生した場合でも、当社は責任を負いません。
《評価時点》2025年9月
