【防災力:3】東急ドエルアルス多摩川
「東南海トラフ地震」「首都直下地震」等の大地震や、千年に一度といわれるような「スーパー台風」「線状降水帯豪雨」等の大水害等に遭遇しても、家族の”命”と”財産”を守ることのできる可能性が高い不動産であるか否かを簡易評価します。
災害に強い不動産は資産性も保たれます。
※建物が壊れたら資産性どころの話ではないので。
物件名 東急ドエルアルス多摩川
[所在地] 〒146-0093 東京都大田区矢口3丁目28
防災力 | Level 3 |
地盤 | [3]液状化、沖積層 |
浸水 | [3]多摩川の氾濫リスク |
建物 | [3]築古(1987年竣工) |
火災 | [5]接道状況及び系統連続性は良好 |
※5段階評価で5が最も安全(判断基準はこちら) |
標高・地形
●標高5mほどの多摩川河口周辺に広がる低地(一部、自然堤防)に位置します。
●東京都建設局が公開している「東京の液状化予測図」では「液状化の可能性がある地域」に該当します。
●対象地は、最も新しい地層である「沖積層」の堆積エリアに含まれます。沖積層は、まだ固まり切っていない軟弱な地層であり、地震時に揺れやすい傾向があります。
※ [国土地理院地図] → [土地の成り立ち・土地利用] → [土地条件図]
※ 東京都建設局 → [東京の液状化予測図]
表層地盤増幅率
●表層地盤における地震時の揺れの大きさを示す地盤増幅率は”1.6~1.69”です。
●多摩川河口周辺に広がる低地エリアではマシな数値ですが、地震時の揺れが大きくなる可能性がある場所です。
※地盤増幅率が”1.8”以上だと地盤が弱い(揺れやすい)とされます。推奨レベルは”1.6”以下です。
※ [J-SHIS Map(提供:防災科学技術研究所)] → [表層地盤]
【参照】高台立地が原則だが、高台でもダメな場所がある(J-SHIS Mapの見方)
近隣のボーリング調査
●敷地内に公開されたボーリング調査地点はありません。
●周辺にある調査地点では、
▼表層に問題はないものの、深度約8m以深にN値3~4の柔らかい地層が続いている地点が多いです。
▼支持層の深さは、約15m~18mの地点と、約28mの地点があります。
▼地下水位の下に、砂質の地層が存在する地点があるので、液状化の可能性を否定できません。
●表層面の下に柔らかい地層が存在し、支持層も深い可能性があり、液状化リスクもあるので、地盤が良い場所とはいえません。
※地層は、数メートル離れただけで大きく変わることがあるので、購入の際には、対象地の地盤調査報告書を取り寄せましょう。
浸水リスク
●高潮による浸水可能性の指摘は約0.1mにとどまるので、大きな影響はないでしょう。
●多摩川の氾濫による浸水可能性は、敷地全体に0.5m~3m未満の指摘となっています。
●高潮の浸水も、多摩川の氾濫による浸水も、昨今「想定外」の災害が毎年のように起きていることを想起しますと、ハザードマップの想定を超える事態はあり得ます。
【高潮ハザードマップ】
※ [東京都港湾局] → [高潮リスク検索サービス]
【多摩川洪水ハザードマップ】
※ [大田区防災ハザードマップ] → [多摩川ハザードマップ(最大浸水深)]
建物
●1987年9月竣工のSRC造地下1階地上14階建です。
●施工会社は、準大手ゼネコンの「東急建設」です。
●全体的にシンプルかつどっしりとした形状です。
●ただ、築年が古いため、建物に歪みやダメージが蓄積している恐れがあります。地盤の悪い場所にある築古の建物に関しては、損傷リスクを計上します。
【参照】大地震に耐えられる建物の条件
※記事内の「新耐震なら安全か」に築古建物のダメージについて触れています。
接面道路
●西側(幅員約9m~11.5m)、南側(幅員約6.4m~7.4m)の2本の区道に接面している2方路地です。接道部分では、敷地後退をして歩道等を整備しています。
●第二京浜(国道1号線)との接続は容易なので、系統連続性は良好です。
●接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。
地域危険度調査
東京都の「地震に関する地域危険度測定調査」によると、「矢口3丁目」の地域危険度は“3”(※)であり、災害リスクが多少残る地域であるとされています。
※地域危険度は、5段階評価で1が最も安全であることを示しています。
周辺環境他
「警視庁犯罪情報マップ」の「全刑法犯発生数2023年累計」を見ると、矢口3丁目は9件となっており、治安は“5段階で1番安全なレベル”です。
本マンションの総評
●地形的には多摩川河口周辺に広がる低地に位置し、「液状化の可能性がある地域」及び「沖積層の堆積エリア」に該当します。
●ボーリング調査でも、液状化の懸念は拭えませんでした。
●多摩川氾濫による浸水リスクが指摘されています。
●築年が古いので、建物損傷リスクを多少認めます。
●接道状況及び系統連続性は良好であり、火災時の災害リスクは低いです。
⇒沖積層の堆積エリアかつ液状化を指摘される立地で、ボーリング調査もあまり良くないので、地盤リスクは無視できません。多摩川に近接した立地なので、浸水リスクも顕在です。築年が古い建物なので、多少の損傷リスクを認めます。これらを総合的に勘案し、防災力を“レベル3”とします。(5段階評価で5が最も安全)
≪注意事項≫
1. 本件評価は、不動産鑑定評価の手法に則ったものではありません。公開された情報のみを根拠とした「簡易評価」であり、実際に購入の判断をする際には、より詳細な調査が必要となります。
2. 本件評価の「リスク評価」は相対的なものです。防災上、“絶対に安全”といえる立地はありません。
3. 本件評価により損害や紛争が発生した場合でも、当社は責任を負いません。