不動産の“防災力“判定基準

「防災マンション東京」では、以下の2つの条件に合致する物件について、『防災力』の判定を行っています。

[エリア] 東京都区部
→<湾岸エリアの埋立地、京浜東北線の東側にある低地地帯、北区・板橋区の荒川河岸エリア>は評価除外エリアとしてきましたが、台地エリアにある物件との比較にもなるため、大規模な物件から評価対象に加えています

[建物] 原則「新耐震」の、タワー型”ではない”建物
→例外は、耐震補強工事を完了している建物。

[エリア]や[建物]を限定している理由

東京都区部に限定している理由 東京都は、基本的には西の方が地盤が良好です。なので、断層型地震が直下で起きない限り、東京都の市部は安全な場所である確率が高いです(勿論、例外はありますが)。
それに対し、都区部は、高台と谷地が入り組み、安全な場所とそうではない場所が混在しているので、そのエリアにある物件の安全情報を提供しようと考えました。
新耐震の建物に限定している理由 「新耐震基準」が何故できたのかというと、「旧耐震基準」で建物が倒壊したからです。日本の地震に「旧耐震基準」の建物は耐えられないと分かっているので、「新耐震基準」の建物に限定しています。
タワー型の建物を除外する理由 タワー型は、損壊可能性という面でも、大地震後の復旧困難性という面でも、災害を想定した場合、リスクが高いことが明白なので、個別の評価は必要ないだろうと判断しています。(過去に評価を依頼され、公開を承諾していただいた物件はタワーでも掲載しています)
【例外】
評価を依頼された物件について、依頼者の許可を頂き情報を公開しているもの。
近所の物件を評価していて、気になったので評価したもの。
等の情報も公開しています。

地盤リスク

地盤リスクの評価基準は、大地震の際にその場所が「揺れやすいかどうか」です。
揺れが抑えられる場所なら、多少施工不良のある建物でも倒壊する可能性は低いと考えられます。
また、以下の判断基準は「原則として」設けており、当然のことながら、条件がピタリと当てはまる土地ばかりではありません。高台で表層地盤増幅率も良好なのに「埋没谷」の範囲に該当している等の場所はザラにあります。
判断の際の優先順位は、「敷地内のボーリング調査結果」を重視した上で、他の要素を総合的に勘案しています。
※「近隣のボーリング調査結果」については、地形や位置等を考慮して、重視する度合いを判断しています。

[5] 《地盤が良好》
原則「台地」(高台)
表層地盤増幅率”1.6”以下
「埋没谷」の範囲に該当しないか、該当しても浅い部分
「液状化の可能性がある地域」に該当しない
ボーリング調査の結果、大きな問題が見当たらない
[4] 《地盤に問題はない》
台地:原則として表層地盤増幅率が”1.6~1.7”以下
低地等でも、表層地盤増幅率が低い(1.6以下)
「埋没谷」の範囲に該当しない、該当しても浅い部分
「液状化の可能性がある地域」に該当しない
ボーリング調査の結果、大きな問題が見当たらない
[3] 《地盤リスクを多少感じる》
表層地盤増幅率が1.8以下
「埋没谷」の範囲に該当する
「液状化の可能性がある地域」に該当する
ボーリング調査の結果、地盤リスクがあり得る
[2] 《地盤リスクがある》
表層地盤増幅率が1.8以上
「埋没谷」の範囲に該当する
「沖積層」の範囲に該当する
「液状化の可能性がある地域」に該当する
ボーリング調査の結果、地盤リスクがあり得る
[1] 《地盤リスクが大きい》
表層地盤増幅率が1.8超
「埋没谷」の範囲に該当する
「沖積層」の範囲に該当する
「液状化の可能性がある地域」に該当する
ボーリング調査の結果、地盤リスクが顕著
[軟弱地盤]
軟弱地盤の定義を少し緩くしています。本サイトは、マンションを対象としているので、支持層が浅ければ、表層面が多少柔らかい地層であっても大きな問題にならないことがあるためです。

※公開され入手できた情報のみで判断しています。対象地の地盤調査報告書等がある場合、そちらの情報を優先してください。

浸水リスク

浸水可能性の簡易分析は、東京都建設局が公開している「浸水予想区域図」→「浸水リスク検索サービス」の情報を原則として利用した上で、標高や地形などの情報も把握し、浸水リスクを判定しています。
※「浸水リスク検索サービス」の見方などは、こちらのページを参考にしてください。

[5] 《浸水可能性が非常に低い》
浸水可能性の指摘なし
[4] 《浸水可能性は低い》
0.5m以下の浸水可能性
浸水可能性の箇所が敷地の周縁部or一部
[3] 《浸水可能性がある》
2m以下の浸水可能性
小さな河川、暗渠となっている河川の川筋
[2] 《浸水被害を受ける可能性がある》
3m以下の浸水可能性
一級河川の流域
[1] 《大雨が降ると危険》
3m超の浸水可能性
一級河川の流域
※現地調査はしていません。公開情報のみで判断しています。

建物損壊リスク

現存する建物は、一定の割合で「施工不良」を抱えている訳ですが、仮に施工不良があったとしても倒壊する可能性の低い建物を選ぶことが大事だと思っています。
大地震の際に、建物が損壊し、修繕が必要となる可能性を大まかに判断しています。主な判断基準は「築年」「階数(高さ)」「建物形状」の3つです。
エキスパンションジョイントを活用していると見える場合は、上から見た建物形状が多少複雑でも問題なしとすることがあります。
「制震」「免振」の建物や「耐震等級2」の建物はプラス査定しています。
そういう意味では、かなり保守的な判断なので、こちらで[2]だからといって「倒壊リスク」があるという訳ではないことをご承知ください。

[5] 《損壊リスクが非常に低い》
築20年以内
10階建以下
横長でどっしりとした形状
シンプルな形状
[4] 《損壊リスクが低い》
築30年以内
20階建以下
横長でどっしりとした形状
シンプルな形状
[3] 《損傷リスクが多少考えられる》
新耐震
25階建以下
極端に細長くはない形状
[2] 《損傷リスクが認められる(ごく一部は倒壊も考えられる)》
新耐震
旧耐震、10階以下、シンプルな形状
25階以下
形状が複雑
[1] 《損壊リスクがそれなりにある(一部は倒壊も考えられる)》
旧耐震
タワー
※現地調査はしていません。公開情報のみで判断しています。

火災リスク

大地震の際や、近隣で失火があった場合に、火災に巻き込まれる可能性について判定しています。
本文の中で「火災時の災害リスク」という言葉を使っているのは、購入したマンション一(ひと)部屋の火災リスクを対象にしているのではなく、対象地を含めた地域全体の火災リスクを対象とした判断をしているという意味を込めています。ガスの元栓とか戸境壁等の話ではないということです。「消防車や救急車がすぐに到着して活動できるのか」「延焼可能性は」等についての判断です。
そして、これは主に「接道状況(接面道路の幅員の広さ)」と「系統連続性(対象地へのアクセスの容易性)」という2つの観点から判定することになります。

[5] 《火災リスクが非常に低い》
接面道路幅員8m以上
系統連続性が良好
[4] 《火災リスクが低い》
接面道路幅員6m以上
系統連続性が良好
接面道路幅員4m超で、系統連続性が良好
総合的にリスクは低い
[3] 《火災リスクが多少考えられる》
接面道路幅員4m以上
系統連続性が普通
総合的にリスクがあり得る
[2] 《火災リスクが認められる》
接面道路幅員4m未満
系統連続性がやや劣る
[1] 《火災リスクが大きい》
接面道路幅員4m未満
系統連続性が劣る
※現地調査はしていません。公開情報のみで判断しています。

【注意点】
リスクを分かり易く伝えるために「5段階評価」をしていますが、中には「4か5か」どちらにするのか非常に決めかねる物件もあります。実際に購入する場合には、別途問い合わせてしてください。実際に、現地調査や役所調査をしたり、管理組合から書類を取り寄せることで評価が変わる可能性があることをご了承ください。
少し前に話題になった「浸水危険地域への居住が309万世帯も増えた」とする山梨大学の秦康範准教授の調査結果を覚えていらっしゃる方も多いと思います。このような「危険地域」に居住する流れを止めたいと思っています。軟弱地盤エリアも「危険地域」です。これらの地域に住めば、家や財産を失うだけでなく、家族の命もリスクにさらされます。この流れを止めるには、消費者に「安全な場所」を具体的に提供することが必要だと思っています。「5段階評価」は少し乱暴な区分けとなりますが、「分かり易く、消費者に伝える」ことを重視した結果だとご理解頂ければ幸いです。